溶射用語集

  • コールドスプレー法

    コールドスプレーの原理は,1980年代半ばにロシア科学アカデミー(Institute of Theoretical and Applied Mechanics of the Russian Academy of Sciences Siberian Branch)にてA.Papyrinによって発見されました。コールドスプレー法は,粉末材料を溶融温度以下の固相状態で基材へ衝突させ,成膜する技術です。この点が,材料を溶融させて基材に付着させる溶射法と大きく異なる点です。コールドスプレー法により形成される皮膜は,・大気中で酸化の無い緻密な皮膜が得られる・材料粒子への熱影響が少なく,熱変質を抑えられる・成膜速度が速い・厚膜が可能である・付着効率が高いなど,従来の溶射法には無い特性を有しています。特に成膜速度が速く,厚膜が可能なことから皮膜としての考え方から構造材料としての用途にも注目を集めています。

    • 図 コールドスプレー模式図

  • 超音速ノズル

    粉末材料を低速で基材に衝突させても成膜されません。そこで,コールドスプレー法では,超音速ノズル(Laval nozzle)を用い高速ガス流を発生させ,そのガス流中に粉末粒子を投入することにより衝突速度を上げ,材料粒子を基材に高速に衝突させる構造となっています。  また作動ガスが高温であるとノズル内に材料粒子が付着しやすくなりノズルが閉塞するトラブルがありますが、プラズマ技研製PCSシリーズでは特殊な材料をノズル材料として採用し、閉塞しないノズルを開発しました。

    • 写真 PCSシリーズ用の超音速ノズル

  • チャンバー及びチャンバーガス温度

    高温・高圧の作動ガスの流れを整え、材料粒子を投入する構造部をチャンバーと呼びます。弊社ではこのチャンバー部のガス温度とガス圧力を計測し、これこそがスプレー条件であると考えています。ガスヒーター部のヒーター温度をスプレー条件とした場合は、運転毎に本当に同一の条件であるとは言えないからです。

  • ガスヒーター&電源ユニット

    作動ガスである不活性ガスを温めるためのヒーター機構と、そのヒーターに電源を供給する電源ユニットです。コールドスプレーで、なぜヒーター&電源が必要なのか‥‥。  コールドスプレー法は不活性ガスを低温のまま使用する訳ではありません。コールドスプレー法では,粒子が衝突し成膜を開始する衝突速度を臨界速度(Critical Velocity)と呼んでいます。

    この臨界速度を超えた粒子のみが成膜されますが、材料粒子の温度を上昇させることにより,粒子は塑性変形し易くなり、結果として臨界速度を引下げることができます。そこに作動ガスをより高温にし、材料粒子を温めたい理由があります。ただしあくまで材料粒子は融点未満までしか加熱させないため、材料を融解させる溶射(Thermal Spray)と比べてコールドスプレー(Cold Spray)と呼ばれています。

  • PCS-1000&800

    PCSシリーズには1000と800の2つのバージョンがあります。チャンバーガスの到達温度が1000度のPCS-1000、800度のPCS-800です。Ni基の耐熱超合金やTi合金などを含めて様々な用途向けとしてPCS-1000を、Alや亜鉛など低融点向けの用途向けにPCS-800をご用意しております。お客様の用途に応じたコールドスプレーシステムをご提案いたします。

  • 付着効率

    コールドスプレーにおける材料粒子の付着率は、臨界速度を超えた粒子のみが基材あるいは既存の皮膜上に付着し、その速度に満たない粒子は付着できないことから、付着率を上げるには粒子速度をより高速にするか臨界速度そのものを引下げることが必要となります。粒子速度を上げるには作動ガス圧を上げる、作動ガス温度を上げることが必要です。付着効率(歩留まり)%を測定する場合には、パイプ状の基材を回転させ、外周にスプレーします。その際、コーティング第一層目が付着している状態を基準として重量を測定しておき、コーティング後の重量と比較して増量gを算出し、投入した粉末材料gから%を計算します。例えば弊社での付着効率90%とは、投入粉末材料1,000gのうち900gが皮膜になっていることを意味します。

  • 粒度分布

    コールドスプレー用の材料粒子は、プラズマ溶射法や高速フレーム溶射法と比較して狭い粒度分布が求められていますが、プラズマ技研工業製コールドスプレー・PCSシリーズでは材料によってはかなり幅広い粒度の粉末を選定することが可能です。投入粉末の粒度分布に注意する必要があるのは、コールドスプレー条件として設定したガス温度・圧力条件で、狙った粒子温度・粒子速度になるかどうかという面だけではありません。パウダーフィーダー(粉末供給装置)から均等に送り出すことができるかどうかも重要です。テスト目的で弊社に持ち込まれる粉末材料でも、5ミクロン以下の微粉が多くパウダーフィーダーから送ることが出来ない場合も少なくありません粉末サンプル等をお持ちの場合はお気軽にご相談ください。

  • オープンラボ

    コールドスプレー装置を実際に体験していただくために、弊社の埼玉工場にオープンラボを開設いたしました。オープンラボとはご希望の一日、最新型コールドスプレー装置を貸し切りとしてテストを行う事ができます。2009年12月に開設以来、多くの大学、企業、研究所の皆様にご活用いただいております。成膜する様子をお客様の目の前で行い、出来上がったサンプルをお持ち帰りいただけます。コーティング材料と基材は弊社でもご用意することができますので、お気軽にご相談ください。 *開設以来オープンラボは大変好評で、日時のご希望に添えない場合がございます。お早めに実験計画のご連絡をいただけますようお願い申し上げます。

  • ハンドリング用ロボット

    基材は固定してコールドスプレーガンをロボットに接続してハンドリングする方法と、コールドスプレーガンは固定して基材をロボットでハンドリングする方法のどちらでも対応できます。コールドスプレーガンをロボットで動かす方法は、様々な基材サイズおよび形状に適応できる汎用性に優れています。それに対しガンを固定して基材を動かす方法は、ロボットが小型でよいこと、省スペースに対応できることから大学や研究所の設備として最適です。 弊社のオープンラボではガンをロボットで動かす方法を採用していますが、7月にオープン予定の新オープンラボではガンを固定し基材を動かす方法を採用しています。

    • オープンラボ、ガンをロボットで保持している

    • 新オープンラボ、ワンタッチで基材を固定出来る治 具を備えロボットで動かす方式を採用

  • 高圧・高温型コールドスプレー

    コールドスプレー装置には高圧型と低圧型の2種類があり、1 MPaを超えないものを低圧型、1 MPa以上で運転できるものを高圧型と呼んでいます。プラズマ技研製コールドスプレーであるPCSシリーズは5 MPaまでの運転が可能な高圧型です。高温型と低温型の境目の厳密性はありませんがガス温度を600度以上に加熱できる装置が高温型と呼ばれています。コールドスプレーの付着メカニズムから考えても、粒子をより高速に加速することと粒子温度を高温化することが高い付着効率で緻密な皮膜を得る事に直結します。窒素ガスで多くの材料を成膜できること、生産性と品質などすべての面で高圧・高温型のコールドスプレーの方が勝っています。

  • 粒子速度

    コールドスプレー法において、飛行材料粒子が付着をし始めるスピードである臨界速度を超えない粒子は付着することができません。そのため粒子速度の観察はきわめて重要です。弊社では高精度な熱流体解析ソフトウェアを使用したコールドスプレー内のガス及び粒子の速度・温度シミュレーションにより、ノズルデザイン、スプレー条件の最適化を行っております。またDPV-2000(溶射の粒子温度・速度測定装置)を用いて実測を行う事でシミュレーション数値の精度を向上させています。

  • 不活性ガス

    音速は,ガス種,ガス温度によって異なり,図に示すように分子数の小さいガスの方が速くなり,温度が高いほど速くなります。コールドスプレー法ではおもにコストの関係から一般的には窒素を用います。ヘリウムを用いれば窒素を用いた場合の約3倍のガス流速を得ることが出来るため、窒素で成膜できなくともヘリウムを用いることで成膜できる材料もあります。しかし,スロート部で3倍のガス流速を得られるということは,3倍のガス流量を流すことになります。ヘリウムは高価なガスである為,付加価値の高い部品でなければ使用することが難しいと考えられています。そこで,近年ではヘリウムの回収装置を導入し,実際にテストプラントにて稼働を行なっている研究機関もあります。実用上のプラントとして導入するには,かなり高価なプラントではありますが,昨今のヘリウムの価格を考えれば十分に回収できる投資コストであると考えられます。また窒素にヘリウムを任意の割合で混合することにより、コストを抑えて高速のガス流を得る方法もあります。原理的に考えれば,水素を用いることが最も理にかなっていますが,爆発の危険性から現実の生産には使用不可能といってもよいでしょう。しかし,窒素やヘリウムに少量の水素を混合し,ガス流速を上げることは可能であり,今後の実験課題の一つでもあります。

  • ヒーター一体型コールドスプレーガン

    作動ガスを昇温するガスヒーター部とコールドスプレーガンが一体型となっていることもプラズマ技研製コールドスプレーPCSシリーズの特徴です。  超音速ノズル部およびチャンバー部を併せてコールドスプレーガンと呼びます。ガンに高温・高圧のガスを供給するヒーター部は、当然ながらガンに近ければ近いほど熱エネルギーのロスが少なくなります。それだけでなく外部にヒーターを備えた他社装置の場合ではコールドスプレーガンをヒーター部を接続させるためにフレキシブルなガスホースを必要とし、フレキシブルホースを引きずるようにガンをトラバースすることになります。周辺機器への干渉はもちろん、作業者が触れて大けがをする場合も考えられます。ヒーター一体型のコールドスプレーガンは、まさにコールドスプレー装置の理にかなった形状であると言えます。

  • 塑性変形

    コールドスプレー法は,粉末材料を溶融温度以下の固相状態で基材へ衝突させ,成膜する技術です。この点が,材料を溶融させて基材に付着させる溶射法と大きく異なる点ですが、その付着メカニズムから塑性変形する材料粒子でなければ基本的に成膜できません。セラミック粒子などをスプレーした場合では、非常に特殊な材料を除き成膜はできません。 コールドスプレーで成膜したCu皮膜の断面をエッチングして観察した写真を示します。写真から粒子が一定の形で鱗状に積層しているのがわかります。このようにコールドスプレー法の皮膜は,基材に付着した粒子を後から衝突する粒子が押し潰すことを繰り返し積層しています。

  • コールドスプレー材料

    溶射材料メーカーは世界中にあり、メタルからセラミックまで様々な粉末材料・ワイヤー状・棒状の材料が溶射方法に合わせて販売されています。コールドスプレーでは粉末材料を使用しますが、コールドスプレー装置の普及率の低さから“コールドスプレー用の粉末“として販売されているものはほとんどありません。そこでプラズマ技研工業ではコールドスプレー装置に適した様々な金属粉末を世界中から選定し、コールドスプレー装置を導入していただいたお客様がアプリケーション開発に集中できるようご提案させていただきます。必要とされるコーティングの目的が第一にあり第二にコーティング方法と材料が選定され、その結果スペック(仕様)が決定される‥‥溶射法では確立しているこのスペック決定までの流れを、コールドスプレー法でもスタンダードにしていきます。

  • 酸化

    コールドスプレー皮膜が従来の溶射ともっとも異なる点は、コールドスプレーでは材料粒子を溶融せず固体のまま積層することによって成膜されることと、プロセスが材料の融点以下であるから材料は熱による変質がなく、組成変化も生じないということです。したがって皮膜はほとんど酸化されず、バルクの材料の特性に近くなります。材料が粉末になっている段階で表面は酸化膜に覆われていますが、粒子が高速で基材に衝突し変形して密着するなかで酸化膜は飛散してしまい皮膜への混入はわずかとなります。

  • パウダーフィーダー

    パウダーフィーダーはコーティング材料であるパウダーをコールドガンに供給する装置です。使用できるパウダーはその流動性にもよりますが粒径5μm~150μmです。POFC-1005のパウダー充填容積は0.5リットルとなっています。より長時間の連続運転を可能にする2.5リットルタイプ、15リットルタイプをオプションで用意しています。

    • 写真 2.5リットル型のパウダーフィーダー