技術レポート

非移行式直流プラズマトーチの三次元数字シミュレーション

Three-Dimensional Numerical Simulation of Non-transferred DC Plasma Torch
プラズマ技研工業(株) 〇黄 仁忠 深沼 博隆
金沢大学大学院 田中 康規 上杉 喜彦
RenZhongHuang, Hirotaka Fukanuma (Plasma Giken Co. Ltd.)
Yasunori Tanaka , Yoshihiko Ueshigi (Kanazawa University)

1.緒言

プラズマ溶射法とはアルゴンなどの作動ガスをプラズマトーチ内に流してアノードとカソードの間に直流アーク放電により高温・高速のプラズマジェットを発生させ、この中に金属、サーメットあるいはセラミックスなどの粉末を投入し溶融と加速を行い成膜する技術である。プラズマ溶射法の最大な特徴はほぼあらゆる材料を溶射することが可能なことである。

現在プラズマ溶射法は多岐に渡る産業分野で利用されている。しかし、溶射現象は多くの点で未解明のままである。その内の一つにプラズマアーク現象がある。アーク現象の理解のためには実験測定とシミュレーションを用いる二つ有効な方法がある。今回、プラズマトーチ内のアーク現象を明らかにするため3次元数値電磁熱流体解析を試みた。

プラズマと電磁場と相互作用により、プラズマの温度場及び速度場が決定される。その相互作用は複雑で、アークが不安定となる場合があることが報告されている[1]。本研究ではプラズマは局所熱平衡状態にあると仮定して、プラズマトーチの中におけるアルゴンガスアークの温度場および速度場を解析した。

2.解析法

シミュレーションに用いたトーチのディメンションをFigure 1に示す。数値モテルの構築にあたり、次の仮定を用いた。

1) アークプラズマ流は理想気体とし、プラズマは局所熱平衡状態で熱伝導率、電気伝導率、比熱と粘性率等の物性が温度だけの関数と仮定する。
2) 熱流動場は非定常3Dとしk-ε乱流モデルを使用する。重力は無視する。
3) プラズマの放射エネルギーを無視する。粘性散逸についても無視する。
4) 誘導電界は無視する。
5) 電極付近は非熱平衡状態である。しかし解析が複雑になるため電極近傍 0.1mm 以内で導電率を10000 S/m一定と仮定する。

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以下に基礎方程式を示す。

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Fluent V6.3のUDFを利用し、状態方程式とオームの法則とMaxwell方程式を連立させて、ガスの速度場と温度場を求めた。Figure1における熱流動場と電磁場の境界条件は以下の通りである。

Variable Pressure Velocity Temperature Electrical Potential Magnetic Potential
Inlet P =Pin V=Vin T=Tin ∂O/∂n=0 A=0
Cathode ∂P/∂n =0 V=0 T=Tcathode ∂O/∂n=-Jc/σ ∂A/∂n =0
Outlet ∂P/∂n =0 ∂V/∂n=0 ∂T/∂n=0 ∂O/∂n=0 ∂A/∂n =0
Anode ∂P/∂n =0 V=0 -λ∂T/∂n =hw(T-Tw) O =0 ∂A/∂n =0
ガスはArで流量が50SLMとし電流を500 Aとした。

3.結果と考察

Figure 2に時プラズマガスの温度分布の時間変化を示す。同図において、t=858 μsの時に図中の上側に陽極にアーク根 (陽極点) が維持されているが、868 μsの時に図中下側陽極に新しい陽極点が形成される。
時間の経過とともに元の陽極点から新しい陽極点(918 μs)に移行してアークが伸びている。Figure 3はプラズマアークの光柱電圧が25~45 Vで振動していることを示している。変動周波数は11 kHzであることがわかった。Figure 4と5に時間が868 μs経過した時のノズル内の温度と速度の分布を示す。トーチ出口のプラズマジェット温度が約14000 Kで、速度が1000 m/sであることが示された。

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4.結言

3Dモデルを用いたプラズマ溶射法のトーチ内の速度場と温度場を解析できた。本プラズマトーチに形成されるアーク場合にアーク電圧は変動し、その変動周波数が約11 kHzであることがわかった。

5.参考文献

1. J.P. Trelles, C. Chazelas, A. Vardelle, and J.V.R. Heberlein, Arc Plasma Torch Modeling, Journal of Thermal Spray Technology, Volume 18, Numbers 5-6 / December, 2009, P728-752