技術レポート

減圧コールドスプレー(AD)法によるアルミナ皮膜 成膜条件およびその特性

Characterizations of Al2O3Coatings influenced by Low Pressure Cold Spray conditions
プラズマ技研工業株式会社 ○大野 直行,深沼 博隆
Ohno Naoyuki,Fukanuma Hirotaka (Plasma Giken Co.Ltd.)

1.緒言

近年,溶射協会の講演大会において溶射材料を溶融しないで成膜を行う,コールドスプレー法,エアロゾルデポジッション法の発表が多くなされている.当社では,2002年よりコールドスプレー法の研究に着手し,多種類の金属材料について成膜を行えるようになってきた.そこで,今回コールドスプレー法によるセラミックスの成膜について検討を行った.コールドスプレー法は,大気圧雰囲気で大量のガスにより粒子を加速し基材に衝突させ成膜を行う.そのため,基材近傍では衝撃波が発生し小さい粒子は,急激に減速してしまう[1].そこで,コールドスプレー装置を減圧溶射チャンバー内に配置することによりエアロゾルデポジッション法と同様な装置を構成し,アルミナについて成膜実験を行った.

エアロゾルデポジッション法は,多くのアプリケーションの発表がなされているが[2],その成膜原理や成膜条件についての発表は未だ少ない.そこで,今回当社で行った減圧コールドスプレー法(以降AD法)によるアルミナ成膜実験条件およびその特性について発表する.

2.実験方法

本研究では,成膜条件の中で最も成膜に影響が有ると考えられる粒子サイズについて実験を行った.成膜材料には,粒子サイズの異なった材料が入手し易いホワイトアルミナ研磨材を用いた.使用した材料は,(株)フジミインコーポレーテッドWA#30000,WA#10000,WA#8000,WA#4000,WA#2000の5種類の粒子サイズの異なる研磨材を使用した.図1に各アルミナ粉末のSEM像を示す.SEM像よりWA#2000,WA#4000は,ドライ環境で粒子が単体で存在していることが分かる.WA#8000,WA#10000では,粒子単体での存在は確認されるが粒子同士が一部凝集し始めている.WA#30000では,粒子単体での存在は,認められなくなり各粒子が集まった凝集体としてのみ確認された.AD法の場合,材料粉末を一度ボールミル処理を行うことにより付着効率が向上すると報告されているが[3],今回は材料粒子の大きさについて実験を行うことを目的としているため,ボールミル処理は行わないことにした.このような材料を用い,基材にガラス,SUS304を用意し成膜実験を行った.実験条件を表1に示す.

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3.実験結果と考察

各材料でガラス基板上へ成膜した外観写真を図2に示す.図2よりWA#2000,WA#4000,WA#8000,WA#10000では,ガラス基材上に黒い膜が成膜された.ただし,WA#8000が全体的に黒い膜状態であるののに対し,WA#2000は,色が薄く透けているような状態であり,膜厚も極薄く測定不能な状態であった.WA#4000は,成膜範囲の内側で膜厚が薄く,削られた様な状態が観察された.また,WA#10000では,黒い膜の上に白い粒がまだらに付着したような状態であった.WA#2000?WA#10000は,ガラス基板上に黒い膜が成膜されたのに対し,WA#30000は,全体に白い膜が成膜された.

各試験片の表面SEM観察を行った.EDS観察の結果WA#2000で行ったガラス表面にもアルミナ粒子が存在しているのが確認された.SEMによる観察では,WA#2000,WA#4000,WA#8000の表面状態は,いずれも類似しており,微粉末が隙間なく配列することにより膜を形成している.図3にWA#8000で成膜した膜表面のSEM像を示す.WA#10000で成膜した際に観察された膜表面の白い粒状部分のSEM像を図4に示す.図4と図1のWA#30000のSEM像は,類似していることからWA#10000で成膜した膜表面の白い部分は,粉の凝集体で有ると言える.また,WA#30000で成膜した膜は,膜全体が図4に示すような表面状態であった.よって,WA#30000で成膜した膜は,凝集した粉末が集まった凝集体であると言える.

表1 アルミナ成膜条件

使用ノズル 7×1mm
作動ガス ヘリウム
作動ガス流量 20SLM
真空度 40 Pa
基材-ノズル距離 10mm
基材-ノズル角度 90°
移動速度 20mm/s
移動ピッチ 1 mm
移動範囲 6×50mm
施工回数 50Pass

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4.結論

今回行ったアルミナ研磨材での成膜可能粒子サイズは,1~3μm程度であった.AD法で成膜に関与する粉末の粒子サイズは,極限られた範囲の大きさの粒子であると言える.AD法で緻密な膜を得るには,極限られた成膜条件で成膜を行う必要が有ると考えられる.今後,AD法の成膜原理が解析されることにより材料ごとの成膜条件が推測できることが望まれる.

参考文献

1. 片野田,松尾日本溶射協会第80回全国講演大会講演論文集,pp.9-10(2004).
2. 明渡純表面科学,Vol.25-10,pp.25-31(2004).,金属,Vol.75-3,pp.16-23(2005).
3. 岩田,明渡日本溶射協会第81回全国講演大会講演論文集,pp.37-38(2005).