技術レポート

減圧コールドスプレー法におけるアルミナ皮膜特性に及ぼす溶射条件の影響

Influence of spray conditions on the properties of the Al2O3 coatings prepared
by low-pressure cold spray process
(株)プラズマ技研工業 〇黄仁忠 大野直行 深沼博隆
RenZhong, Huang Naoyuki,Ohno Hirotaka, Fukanuma (Plasma Giken Co. Ltd.)

1.緒言

コールドスプレー法は、新しい成膜方法として大きな注目を浴びている。今までの研究結果から、コールドスプレー法は成膜材料が塑性変形することにより成膜することが解っている。現在、金属、ポリマー、サーメットなどが成膜可能となっている[1]。しかし、コールドスプレー法による脆性材料の成膜は難しい。

最近、真空雰囲気で乾燥したセラミックスや金属の微粉末を固相状態のまま基材に衝突させ、成膜するプロセスが報告されている[2 – 4]。このプロセスは、コールドスプレー法と同様に低温高速衝撃により成膜されている。

本研究では、減圧コールドスプレー法 (あるいは、エアロゾルデポジション法)によりコーティング条件を変化させ皮膜を作成し、コーティング条件と皮膜の特性に付いて調査を行った。

2.実験方法

溶射材料は,(株)フジミインコーポレーテッドのホワイトアルミナ研磨材 (WA#8000) を用いた。Fig.1 に粉末のSEM像を示す。
皮膜作製には、当社の減圧コールドスプレー溶射装置を用いた。基材にAlとSUS304を用意し成膜を行った。実験条件をTable 1に示す。
膜の性質を調査するために、溶射した皮膜の組織を SEM で観察し、膜の硬度をビッカース法 (25g, 15sec) により測定した。

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Table 1. Low-Pressure Cold Spray conditions

使用ノズル 5×0.5 mm
作動ガス He
作動ガス流量 15, 20, 25 SLM
真空度 350 Pa
基材-ノズル距離 10, 20 mm
基材-ノズル角度 90°
移動速度 10 mm/s
移動ピッチ 1 mm

3.実験結果と考察

Figure 2に成膜した膜表面(a) と膜断面(bとc) のSEM像を示す。粉末の写真と比べて、付着した粒子は細かく、1μm 以上の粒子はほとんど観察できない。これは衝突時に、脆いアルミナ粒子が砕け、成膜することと推測される 。膜の断面組織より、クラックが観察された。これは粒子高速衝突し、局所領域に熱と変形を発生し、膜応力の影響によるものを考えられる。断面拡大組織 (Fig 2c)により、特に、膜の上層部には、多くの欠陥が観察された。これは膜表面付近では、後続の粒子による衝突が少なく、緻密化されないのであるのを考えられる。

Figure 3 に皮膜硬度に及ぼすヘリウムガス流量の影響を示す。この図より作動ガス流量の増加に伴って、皮膜硬度は増えるのが認められた。これは作動ガスを増やすことにより、粒子速度が速くなり、もっと緻密の膜ができるためと考えられる。

Figure 4に皮膜硬度に及ぼす溶射距離の影響を示す。この結果から、溶射距離は10 mmと20 mmでは、皮膜硬度ほとんど変わらなかった。これは溶射距離の変化量が小さく、膜の緻密性の影響が小さかったのを考えられる。

Figure 5 に皮膜硬度に及ぼす基材の影響を示す。この結果から、基材が Al と SUS で、皮膜硬度 650から、850の間に収まった。基材は、皮膜の硬度に影響がないのがわかった。

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4.結論

減圧コールドスプレー法により、アルミナ粒子は固相状態にまま基材に衝撃され、基材に付着できた。

しかし、使用した粉末サイズより微小な粒子になって付着していた。実験の結果から、溶射条件は皮膜の性質に大きい影響があるのが分かった。今後,減圧コールドスプレー法の成膜メカニズムの解明を進め、材料によって、優良な性質の膜できる成膜条件を開発することが望まれる。

参考文献

1. C-J. Li and W. Y. Li, Surface and Coating Technology 167 (2003), p 278-283
2. 明度純, 表面科学 Vol. 25, No. 10, pp. 635-641, 2004
3. 明度純, 表面技術 Vol. 56, No. 15, pp. 48-56, 2005
4. Jun Akedo and Maxim Lebedev, Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 40 (2001) pp. 5528-5532