技術レポート

アンダーカットの角度が溶射皮膜に与える影響

Influence that angle of undercut gives sprayed coating
プラズマ技研工業(株) ○高野 幸子, 大野 直行, 深沼 博隆
Kohno Sachiko, Ohno Naoyuki, Fukanuma Hirotaka (Plasma Giken Co., Ltd.)

1. 緒言

溶射製品は、アンダーカットした後に溶射するケースが多い。しかし、アンダーカットの角度と皮膜の構造に関する研究例は少ない。今回、アンダーカットの角度を変えて、チタニア(TiO2)、ニッケルクロム(Ni-Cr 80/20)及びタングステンカーバイト 12 %コバルト(WC- 12 Co)を溶射した。アンダーカット斜面上の皮膜の構造を知るために顕微鏡による皮膜断面観察を行った。

2. 実験方法

アンダーカットの角度と皮膜の構造の関係を調べるために、角度と溶射材料を変えて皮膜の状態を調べた。角度は 30o, 45o, 60o, 90o, 100oの 5 種類、用意した。図1にアンダーカット角度箇所を示す。TiO2及びNi-Cr 80/20はプラズマ溶射法により、WC- 12 Coは高速フレーム溶射法により溶射した。試験片は、φ 100 、厚さ 10mm、幅 50 mmの円筒状S45Cに、側面の中央部 30 mm幅を深さ 0.5 mmで一周、アンダーカットしたものを用いた。試験片に溶射した後、光学顕微鏡を用いて溶射皮膜の断面観察を行った。

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3. 実験結果と考察

【TiO2溶射皮膜】図2(a)にアンダーカット角度θ= 30o、(b)に角度θ= 100oのTiO2溶射皮膜断面写真を示す。TiO2溶射皮膜の場合、角度が大きくなるにつれ斜面上の皮膜はポーラス状になった。TiO2溶射皮膜の組織はアンダーカット角度θ= 30oのとき、基材の形状が斜面上部も平坦部上部も基材の形状に沿って平行に積層していた。しかし、角度θ= 100oのとき、斜面上部の皮膜組織は基材に沿って平行に積層していなかった。アンダーカット角度が大きいほど溶射皮膜の構造に影響を与えることが分かった。

【Ni-Cr 80/20溶射皮膜】図3(a)にアンダーカット角度θ= 30o、(b)に角度θ= 100oのNi-Cr 80/20溶射皮膜断面写真を示す。Ni-Cr 80/20溶射皮膜の場合、角度が大きくなるにつれアンダーカット角度部分の基材と溶射皮膜の間に隙間が現れ、大きくなっていた。Ni-Cr 80/20溶射皮膜の組織は、アンダーカット角度θ= 30oのとき基材の形状が斜面上部も平坦部上部も粒子が扁平していた。しかし、角度θ= 100oのとき斜面上部の皮膜内部に飛散した粒子が多数含まれていた。アンダーカット角度が大きいほど、飛散した粒子は多く、かつ、基材と皮膜の境界面に隙間ができることが分かった。

【WC- 12 Co溶射皮膜】図4(a)にアンダーカット角度θ= 30o、(b)に角度θ= 100oのWC- 12 Co溶射皮膜断面写真を示す。WC- 12 Co溶射皮膜は、アンダーカット角度θ= 30oのとき基材に沿って平行に積層していた。角度θ= 45o以上ではアンダーカット斜面上部角部より皮膜表面に向け、アンダーカット斜面に沿って不連続膜境界が観察された。不連続膜境界はアンダーカット角度が大きいほど皮膜表面付近まで達していた。

4. 結論

TiO2溶射皮膜は角度が大きくなるにつれ皮膜のポーラス部は増えた。Ni-Cr 80/20溶射皮膜は角度が大きくなるにつれ皮膜と基材の境界面に隙間が現れ、大きくなっていった。また、皮膜内部に飛散した粒子の数は増えていった。しかし、高速フレーム溶射によるWC- 12 Co溶射皮膜は角度が変化しても皮膜にポーラス状および基材との境界面に隙間は観られなかった。プラズマ溶射によるTiO2及びNi-Cr 80/20溶射皮膜はアンダーカット斜面上の皮膜の構造は角度に大きく依存した。しかし、高速フレーム溶射によるWC-12 Co溶射皮膜はその傾向が顕著に現れなかった。

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